とある10の物語
-物語が生まれるノートに記す
うつくしき表現者たちのそれぞれの物語-
ここ数年は春に風邪を引くようになり
今年も水仙の咲く頃には身体が重くなった
とは言っても鳥の囀りが声高らかに陽に向かえば、外で咲いてきた花々を見たくて外に出て過ごすことが楽しみな日々に
共に暮らす山羊のタパも冬に蓄えた暖かな産毛を落としたいようで、櫛を通して柔らかな産毛を取ってあげるのが心地良さそう
溜まってきた産毛は柔らかく暖かく、仄かな土色で、いつか紡いで糸にして織布にできたらさぞ美しいだろうなと、産毛を撫でてはいつかの事柄に想いを馳せていました
友人夫婦が先日、桜の頃に訪ねてくれて
お家でゆっくりと過ごすなか
二人は布を織って生きたいと
目を輝かせながら話していました
タパの産毛のことを話すと
すぐにスピンドルで糸に紡ぎ始めて
魔法のように紡がれていく産毛に
胸が踊るような気持ちになりました
お互いの人生が紡がれていくように
事柄を通じて希望を感じ
人生が彩られていくことが
とてもとても幸せに感じました
それは体調を崩していることで
一瞬一瞬がより儚く感じられた
おかげかもしれません